≪これが米国か?≫--憂慮するNicholas D.Kistof

“Frankly, Muslim life is cheap, most notably to Muslims”
「はっきり言って、イスラム世界は安っぽい。それこそイスラム教徒を見れば明白だ」
これが米国のリベラルな月刊誌The New Republicの主筆Martin Peretz氏の今月のブログのコメントだから唖然とする。


Pulitzer Prizeを二度受賞しかつてThe NY Times東京支局長を務めたNicholas D. Kristof氏。現在同紙の署名入り特集記事を担当し注目されているが、“For a glimpse of how venomous and debased the discourse about Islam has become,・・”(イスラムに対する悪意に満ちた驚くべき蔑視の態度を垣間見るにつけて・・)と前置きして、最近の米国に見られる異様ともいえるMuslim bashingを鋭く批判している。

いま51歳のKristof氏の経歴は多彩だ。Cairoでアラビア語を、台北で中国語を学び、高卒後フランスで働き、学生時代アフリカ、アジア諸国バックパッカーの旅に出ては雑誌に記事を投稿し旅費を稼いだという。四カ国での生活体験があり、旅した国は150ヶ国以上、米国50州を全て訪れ、中国の全省、日本もほぼ全国を回っている。そして特筆すべきは、Bush前大統領によって“the Axis of Evil”(悪の枢軸)と名指しされた国へも2度訪れたという稀有な国際派米国人ジャーナリストだ。同氏のこうした旅行は波乱に満ちたものだ。マラリアに感染したり暴動に遭遇したり、果てはアフリカで墜落した航空機に乗り合わせ、九死に一生を得たという。
そのKristof氏がThe New Republicの主筆のコメントを嘆いている−−

「長く寛容の精神を持ち合わせていた雑誌の著名なコメンテーターが『イスラム教徒は米国憲法の保障する自由の精神に値するものか思案に苦しむ』などと述べている。黒人やユダヤ人に対し口が滑ってもそんな台詞を洩らすことなど出来ないだろう? 米国に住む700万人近くのイスラム教徒はどうだろう。自らの信仰を野蛮なものと公然と批難されてどのように感じるだろうか?」
“This is one of those times that test our values, a bit like the shameful interning of Japanese-American during World WarⅡ, or the disgraceful refusal to accept Jewish refugees from Nazi Europe”

「いまこそ我が国の価値が試されている。まるで第二次大戦中の日系アメリカ人に対する恥ずべき強制収容やヨーロッパのナチを逃れたユダヤ人難民の受け入れを拒否した不名誉な時代に戻った感さえする」
Martin Peretz氏のような過激派は米国の民主主義を傷つけ、暴力の危険を増大させ、ジハードを元気づかせる。
タリバンのスポークスマンZabihullahはground zero近くのモスク建設に対する反対の声について早速次のように警告している−−


「モスク建設阻止行動は、我が方を利することになる。義勇兵が増え、義援金や支持者も多くなろう」「モスク建設反対が高まれば高まるほど、ジハードは力づく」

Theodore McCarrick枢機卿も警鐘を鳴らす−「アメリカはこのような国ではない。アメリカは憎悪によって建国されてはいない」
イスラム教徒を激しく批難する連中に対し、キリスト教福音派の指導者Rev. Richard Cizik師は“Shame on you. You bring dishonor the name of Jesus Christ. You directly disobey his commandment to love your neighbor.”(恥を知れ。イエス・キリストの名を侮辱し、汝の隣人を愛すべしとするイエスの戒律に真っ向から背くものだ」と厳しく戒めている。


米国には良心的な人権派のジャーナリストは多い。良識ある真のキリスト教指導者も少なくない。
問題は大衆迎合の有力メディアの存在だ。FoxやCNNはもとより、ABCやThe Washington Postもこのところ保守化傾向が強まっている。
米国も我が国に似て“集合的無意識”に流されてゆくのか。President Obamaが唱導した和解と共生は何処へやら・・? キナ臭い“An Aye for An Aye”に向かうのか。