洪水被害・熱中症−−被害者・犠牲者の背景に貧困・格差

七月のモンスーン時季に大洪水に見舞われたパキスタンのKhyber州Pakhtunkhwa。以来、先月半ばまでに被災者2000万人、死者2000人、避難者50万人に及ぶ。同国史上最悪の惨禍である。この洪水被害は隣国Afghanにまで及んでいる。

この7日、米女優Angelina JolieさんがUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)親善大使として現地Mohib Bandi村の洪水罹災者、避難民キャンプを訪問。かかる未曾有の災害に対し、国際社会による緊急援助の必要性を訴えた。
“I am very moved by them and I hope that I am able to, today and tomorrow, be able to do something to help bring attention to the situation for all the people in need in Pakistan”

彼女は惨状に心を揺さぶられた。パキスタンの避難民たちの危機的状況に目を注ぎ、いまできる緊急援助に立ち上がること。今からでも遅くない出来ることがあるはずだと訴える。まるでその姿は若きマザー・テレサを彷彿させる。
過去最悪の豪雨と洪水はパキスタンに限らない。中米メキシコも90万人が罹災している。7月と8月に襲ったハリケーンによる被害だ。

我が国の今夏はどうか。今なお終息しない猛暑異変。気象庁は「30年に1回の異常気象」と認めた。被害者は熱中症の形となって顕れた。病院に運ばれた人が5万人を超えたという。多くは65歳以上の高齢者、死者は500人に及ぶ。
高齢者が猛暑の炎天下、外出したり激しい運動をするわけがない。被害者の実態を見ると、生活保護を受けられず、電気を止められていた例が少なくない。

独り住まいの老齢者がエアコンも扇風機もなく、蒸し風呂のような部屋のなかで倒れている。発見されたときは手遅れ、病院に担ぎ込まれても蘇生できない。

パキスタン北部の村の救いようのないほどの惨状、そして、大洪水に喘ぐメキシコ南東部の田舎町もそうだが、夥しい被害者・犠牲者の存在の背景にこんにちの貧困と格差拡大という社会問題が横たわっている。