内向き志向はいずれ破綻

“Our burning of the Koran is to call the attention that something is wrong”(コーランの焼却は何が間違っているかを世に問いかけるため)であり“As of this time, we have no intention of cancelling”(今のところ計画を撤回するつもりはない)と昨日まで国際世論を突っぱねていたフロリダ州小教会のTerry Jones牧師。バチカンからの警告、国連事務総長の懸念表明にまで発展、挙句はGates国防長官から直接電話説得され、9/11のburning the Koran計画は撤回した。撤回理由を訊かれてMuslimの指導者Imamとの話し合いでNY, Ground Zero近くに建設計画のモスクについて、建設予定地を他所に移す点で合意したからだと発表。これにMuslim指導者が「そんな約束などしていない」と猛反発。怒ったTerry Jones師「騙された。焼却撤回を撤回し延期することにする」と前言をひるがえす始末だ。

いま国際社会を揺るがす騒動になっているが、米国では余すところ二ヶ月を切ったmid-term electionの行方に持ちっきりだ。Barack Obama氏の支持率が40%台に急落、一向に好転しない雇用情勢・景気対策が最大のネックだ。中間選挙にGOP支持者の多くが投票に行く一方、二年前Obamaの登場に沸いたDP支持者はシラケムードだという。何のchangeも見られないと、特に中間層の失望感は強い。


President Obamaは目下矢継ぎ早に新たな経済対策・雇用創出・景気刺激策を打ち出し、中間選挙に向けて巻き返しに必死だが、議会地図の逆転は免れないのが大方の予想だ。DPが大敗・惨敗するか、若干の後退で留まるかが焦点のようだ。我が国のDPJ代表=PM選も大いに気になるところだが、いま米国に顕著なBarack Obama氏への逆風の底流には宗教・人種・党派の対立を和解へと呼びかけた黒人初の大統領の登場に対するあからさまなリアクション、ひいてはracismが沈殿している点は否めない。


95年にテロに走った偽狂信集団は別として、宗教・信仰の対立は余り日本では顕在化しない。よく通勤電車の中で日本最大の宗教機関紙「S紙」を夢中で読んでいる信者を見かける。本日の某紙の小さなコラム欄が目を惹いた。
この「S紙」などから同宗教団体の帝王I名誉会長のの動静が消えて4ヶ月近くになるという。同会系のS大学N教授が注目すべき学術論文を発表−−。
「少数の高学歴等のエリート層がS会の運動全体を牽引している」「末端や底辺の会員の欲求や苦境が運動に反映されず」「組織の官僚化と硬直化が生まれている」その運動は「I名誉会長を宣揚するものが中心で、社会的弱者への視線を共有した社会運動は見られなくなった」と指摘。そのうえで、同会と政教一体の関係にあると見られるKM党が「反戦平和理念を全く棚上げし、S会員の反戦平和観とのズレを拡大し、宗教団体の政治参加の内在的限界が露呈してきた」と大胆な論陣を張っている。内容は誠に的を射ており、学者として権力におもねない勇気ある論文だ。
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最近気になるのは日本人の若者の内向き傾向だ。気になるというより危機感さえ覚える。Oxford Universityに着任して2年目になるK教授が懸念し嘆いている。同教授の関係する学科の大学院の入学選抜に携わって困惑したようだ。200件近い応募者。Oxfordへの入学志望動機、問題意識を志願者は切々と語っているという。「世界の問題」の縮図が、同大の研究・教育の素地と資源となっている。「世界の問題」につき直接論議する機会が学生にも教員にも付与されている。この点がOxford Universityの魅力だと志願動機に書かれているという。

問題は志願する学生の国別地図だ。中央アジアから、戦火の止まない中東から、rising nationsの中国・インド・韓国からから・・。そして、日本からと言いたいところだが、現状を知り愕然とする。日本からの出願者はわずか一件。この、内向き傾向は異常だ。海外の有力大学で学ぶ日本人が激減している。K教授は思わず「『鎖国』という言葉が頭をよぎった」と云う。