子規の真似して“筆まかせ”

Christmas Eveの24日、米上院が医療保険制度改革の関連法案を可決した。President Obamaが内政の最重要課題として掲げてきた法案だ。
早速Barack Obama氏からemailが届いた。
タイトルはA Historic Moment. “Thank The Senators Who Have Worked Hard to Pass Health Reform”と可決に向けて尽力した上院議員に感謝の意を示す内容である。

President Obamaは「歴史的な投票で、上院が画期的な法案を通過させた。一世紀近くに及ぶ苦闘が終わりつつある」と評価。そのうえで「本質的で意味のある医療保険改革をやり遂げる体勢がついに整った」と強調した。
が、The NY Timesのコメントは、“Many Will Not Feel Effect of Health Care Change”(改革の効果を実感する国民は少ない)と冷淡だ。

Obama氏は“口まかせ”、メデイァは“筆まかせ”か・・・。
折りしも、注文していた正岡子規の『筆まかせ 抄』(岩波文庫)の中古本が届いた。子規といえば、死期が近づく最晩年の著書『病牀六尺』『仰臥漫録』などがよく知られているが、『筆まかせ』は子規が18歳から25歳にかけて書き留めた楽しい随想である。
その中に「詩文可否の標準」なる次のような一節がある---
「昔しある人が詩を作りて先生に見せたるに、先生曰く『汝の如く意味浅薄なることをいふては詩にならず。詩の句は最少し意味を沢山含めていふべきものなり』と。その人これを聞きて室に帰り、暫時にして一詩を作り、得意顔にて先生に呈す。先生これを見るに『風吹兮猫悲、油貴菓舖喜ぶ』の句あり。先生解する能はず。『これハ何の意なるや』と問ふ。その人答へて曰く『風吹きて砂飛ばし、砂飛んで人目に入る。是においてその人盲となり、活計のために三味線を習ふ。しかるに三味線の胴は猫の皮を以て張る故に、三味線のふゑは猫の悲みなり。また油の高き時は皆夜なべをやめて早く寝る、早く寝る時ハどうしてもそれ子がふゑることになる、子がふゑると菓子を買ふからして、自然と菓子屋の喜びとなることなり』といひしとぞ。こは一場の笑ひ話しに過ぎざれども・・」
まるで『大風が吹けば棺桶屋が儲かる』式の笑話だが、ここに登場している先生とは誰だろう。まさか漱石ではあるまいが、この『筆まかせ』のなかの圧巻は、丁々発止の言葉が飛び交う若き漱石との往復書簡だろう。

子規は明治35年9月19日他界した。享年35歳。
滞在中の倫敦で子規の訃を聞いた≪畏友≫漱石が、「子規の死を知り虚子に宛てた手紙」(明治35年12月1日付)の中に追悼句を五句記している。
 筒袖や秋の柩にしたがはず
 手向くべき線香もなくて暮の秋
 霧黄なる市に動くや影法師
 きりぎりすの昔を忍び帰るべし
 招かざる簿に帰り来る人ぞ
そして漱石は「皆蕪雑、句をなさず。叱正」と締め括っている。ここに漱石の子規に寄せる無量の想いが実感できる。