再びSense of Wonder--“「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない”

名著「沈黙の春」(Silent Spring)のRachel L. Carsonの遺作The Sense of Wonderを今日も拾い読み。邦訳モノ50頁余りの短編だが、詩情あふれる優しい語り口のなかに深遠で透徹した含意が覗える。
いま再び、10代後半の若者世界に身を置くボクにとっては心に刻むべき言葉の数々だ。
「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激に満ちあふれています。私たちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。
もしわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界の子どもに、生涯消えることのないSense of Wonder(=神秘や不思議さに目を見はる感性)を授けてほしいとたのむでしょう」
そしてR.Carsonは「生まれつきそなわっている子どものSense of Wonderを新鮮に保ち続けるためには(子どもたちと)感動を分かちあう大人がすくなくとも1人はそばにいる必要がある」と説く。
そのうえで語りかける「わたしたちは、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではないと固く信じています。
 子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生み出す種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。
 美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知のものに触れたときの感激、思いやり、憐れみ、感嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとだびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにして見つけ出した知識はしっかりと身につきます」

ボクはよく高校生にSense of Wonderの大切さを解説し、具体例を示して、これを呼び覚ますよう呼びかけている。
でも、すぐにも大人世界を迎える若者たちがしっかりした知識と知恵を身につけるには、幼い時代にこの(知識や知恵の)種子を育む土壌が必要となる。今の時代、幼い子どもたちが耕すことのできる肥沃な土壌があるだろうか。