街に本屋さんはあるが、美術館(画廊)・名画座・小ホールがあれば

藤沢周平関連の新刊本が今朝宅急便で届いた。
『未刊行エッセイ集-帰省』と『拝啓 藤沢周平様』(佐高信/田中優子)の二本である。
没後早や11年になる周平さんだが、何故か、落穂拾い式にエッセイが見つかり刊行される。ご本人は自身で書いたものを全て刊行しようとは考えていなかったようだ。雑文を本にすることに抵抗があった。だから、書き捨てのメモのようなものが見つかるわけだ。それが面白い。今度出た『未刊行エッセイ集』だが、何故タイトルを≪帰省≫としたのか。書中、【帰省】と銘打ったモノは、「古い話になるが、秋の中ごろ私用があって郷里の鶴岡に行ってきた。・」(「小説新潮」平成7年1月号)で始まるわずか3頁足らずの小品である。
が、この未刊本の全編を通じて故郷、鶴岡への思いが滲む。
その中に、「鶴岡に美術館を」というちょっとしたスピーチ原稿のようなものが掲載されている。
周平さんは“鶴岡に美術館”の建設を待望して次のように語る。
『美術館が出来て、鶴岡が飛躍的に文化都市化するというものでもないだろうが、そこでひらかれるさまざまな展覧会あるいは催しが、鶴岡市民ひいては荘内住民にもたらす精神的な充足感ははかり知れないものがあるに違いない。建設に少少お金がかかるとしても、長い目でみれば十分にお釣りが来るのではないだろうか。大人だけではなく、子供の将来のためにもぜひ美術館をつくっていただきたいと思う』
この周平さんの心持は同郷の佐高さん(酒田市出身)にも通じるものがあるようだ。
我が街にもいっとき住んだことがある周平さん、ブレることなく政治や社会問題に鋭く切り込む佐高さん、そして静かで明快な語り口の田中優子さん。ボクの信頼する数少ない作家であり文化人である。
わが街にも本屋さんはある。できれば気の利いた古本屋さんが現れないものか。美術館や画廊らしきものがない。映画館や芝居小屋もない。市民の文化度はそう低くないと思っているが、市行政に携わる人たちはどうかしら? お祭りやイベント、催し物の企画はお好きなようだが・・。

未刊行エッセイ集 帰省

未刊行エッセイ集 帰省

拝啓藤沢周平様

拝啓藤沢周平様