女優監督

今月末、銀座テアトルでの封切りを皮切りに"Away From Her"が公開される。サブタイトルの邦題は“君を想う”。カナダ屈指の若手女優Sarah Polleyの脚本・監督による初の長尺モノとして映画ファンは注目している。29歳の若手女優監督がオスカー女優Judie Christieを主演に抜擢しているところが凄い。Judieはボクと同年生まれだ。インド生まれの英国女優だが、80年代長く銀幕から離れ、もっぱら舞台で活躍していた。
この筋金入りのactressが、最近リリースされたばかりのAway From Herで結婚生活44年を迎えた夫婦。認知症の妻を演じ、アカデミー賞ゴールデン・グローブ賞(主演女優賞)にノミネートされ受賞した。2度目のオスカーだ。
年齢30にも届かないカナダの若手女優が円熟した英国の名女優を主演にすえ監督、名作を創り上げた。わが国ではどうか。昨年、河瀬直美さんがカンヌ国際映画祭で審査員特別大賞グランプリに輝いた。『殯(もがり)の森』。ドキュメンタリータッチの秀作だ。でも、さらに今後の作品が期待される河瀬さんだが、女優ではない。映画作家だ。日本では名舞台役者が演出家を兼ねる例はあるが、名女優が名映画監督になったケースは皆無だ。かつて田中絹代がメガホンをもったこともあったが、名女優、名監督にあらず、長続きしなかった。
この違いは何によって生まれるのだろう?