前憂後患---Rio五輪

幕開け目前のRio五輪。リスク山積の国内事情の中で難産必至だ。

2009年、Madrid, Tokyo, Chicagoを退け、南米初の五輪開催を勝ち取ったBrazilだが、2008年の財政危機からいち早く立ち直ったものの、その後はどうか? 

好況下、Lula 大統領は高い人気をバックに、数100万人に及ぶ貧困層の生活改善を図るための一連の政策に巨額を投資。経済誌はブラジルは早晩、英仏を追い抜き世界第五の経済大国になるだろうと予測した。


Lula大統領自身、「ブラジルをこんなに誇りに感じたことはかつてない」とRio五輪開催決定に感涙。「我が国の偉大さを世界に立証する絶好の機会だ」「コカパバーナビーチで大パーティをやろう」と息巻いた。
ところが、五輪開会式を8月5日に控え、浮かれ騒ぐ者は誰もいない。奈落に落とされたように今ブラジルは経済・社会・政治状況が激変し、難問に直面している。
国内石油会社最大手Petrobrasを巡る大汚職スキャンダルが発生した。政府高官や財界の大物に捜査のメスが入った。

Lula大統領の後継Rousseff大統領が弾劾され、Lula 氏自身も取り調べを受けている。その結果、GDPが昨年1年で3.8%暴落し、Rioをはじめ主要都市が財政破綻、国の財政も危険な淵にあり、公務員の給与は遅配、期待された公共投資・福祉予算もカット。超インフレを招き、犯罪の増加に対し、治安警備予算は削減される有様だ。おまけにZikaウイルスに襲われ、ブラジル経済は英仏はおろか印伊にも追い抜かれ世界9位に降下した。

汚職にZika熱に加え資金不足。世界のアスリートの中には出場を辞退する者さえ現れている。五輪予算は削減され、開閉会式の規模も縮小されるだろう。
6月中旬リオ市長が"public calamity"(社会災禍)にあると宣言した。まるで自然の大災害に見舞われた時のようだ。確かに市の財政は破綻し、財政援助無しには五輪開催が不可能になりかねない。中でも、インフラ整備が待ったなしだ。政府は💲85千万を借り入れ、その一部を、現在大幅遅れとなっている、メイン競技場に通じる<新幹線>の完成にあてる計画だが、予定道路に今もホームレスが・・・。

もちろんそれでも競技は始まり、続くだろう。世界はTV画面に釘づけになる。素晴らしいシーンが繰り広げられるだろう。五輪というものは、一旦オープンすれば、開催都市のかかえる難題を尻目に、沸騰するものだ。8月21日の閉会後も世界は動きを止めない。

"祭典"のあとリオの市民は? ---"The people of Rio will be left to pick up the pieces"--寂しく町の修復-後片付けにあたるだろう。