You have long journey ahead(旅路は長い)

6/18から京橋のフィルムセンターで開催中のEU Film Days 2016に足を運んでいる。これまで5本観た。
『日本からの贈り物』(ルーマニア) 『提督の艦隊』(オランダ) 『家族の映画』(チェコ) 『マリヤ、1948年の旅路』(リトアニア) 『ボルドーの領事』(ポルトガル)
日本に大使館を置く26のEU加盟国の選りすぐりの作品を紹介する映画祭だけあって、凡作・駄作はない。どれも秀作ばかりだ。
中でも秀逸で心を打たれたのが『マリヤ, 1948年の旅路』。英題はThe Excursionist(旅人)、本邦初公開のリトアニアの作品だ。全編セリフはリトアニア語とロシア語で字幕は英語。手に汗握るものがある。日本語の字幕無しが幸いして?ストーリーと映像に魅入った。


上映に先がけリトアニア大使館員が挨拶ー「人々の自由を求める心を押し止める力はこの世にはない」と。

バルト三国の映画は馴染みが薄い。2年前に観た『クロワッサンで朝食』のなかでパリに住む老婦人ジャンヌ・モロー(Jeanne Moreau)の家政婦になるためやってきた中年婦人を演じたのがエストニア出身の名女優ライネ・マギだった。
面積が北海道の80%、人口約300万のリトアニア。国の標語<民族の力は統一にあり>にみられる通り独立までの道のりは険しく、大国に翻弄される歴史だった。
第二次大戦時、1941年にナチスドイツに侵攻され、戦後は欧州が東西に分断され、鉄のカーテンの東側に位置したリトアニアスターリン体制の苦難の時代を迎える。数10万人に上る人々がソ連強制収容所に送られたという。

本編The Excursionistは、輸送列車で強制収容所に運ばれる途中、母親を亡くし独りぼっちになってしまった11歳のマリヤ。列車から逃げ出し、監視兵の追跡や密告者の目を逃れ、さまざまな人に助けられ、ロシア人の偽名を使いながら故郷までの6,000マイルの逃避行を敢行する。主人公の少女を演じたAnastasija Marcenkaiteは2103年制作の本作品でデビュー。名演で一躍脚光を浴び、今やリトアニアの名花になっている。



1989年大規模な反ソデモが起き、1990年ソ連経済制裁を受けたが、1991年3月独立を宣言、同年9月、ソ連邦崩壊により独立が認められた。

作品中に心に残るセリフがある。マリヤを助けかくまっていた田舎農家の老婦人が別れ際、マリヤに託した言葉があるー“You have long journey ahead"--「あなたは長い旅に出るのよ」........。