外交はセレモニーでご都合主義か?

従軍慰安婦を巡る外相会談で日韓合意。内外とも評価は概ね良好だ。


The NYTは"Japan and South Korea Settle Dispute Over Wartime 'Comfort Women'の見出しのもとlandmark agreement(画期的合意)に達したと論評。英国BBCも"Japan and South Korea agree WW2 'comfort women' dealと成果を認める。日本が謝罪し被害者救済基金として10億円の支払いを約束したという。
が、韓国の市民感情は一様ではない。第二次大戦中、日本軍部によって推定20万人に及ぶ女性がsex slavesとして強制徴用され、その多くが韓国人。他にも中国、比国、インドネシア、台湾の女性もいた。


大半は80歳代後半。年々亡くなり、現在生存者はわずか46名に過ぎない。当事者の1人、88歳になるLee Yong-sooさんは今回の合意について憤慨。"We are not craving for money. What we demand is that Japan make official reparations for the crime it had committed"(私たちは金銭を欲しがっているわけではない。私たちが求めているのは当時犯した罪に対し日本が公式に賠償することです)。そのうえでLeeさんは"The agreement does not reflect the views of former comfort women. I will ignore it completely."(今回の合意は亡くなった慰安婦たちの考えを反映していません。だから全く受け入れられません)と記者会見で述べている。


従軍慰安婦を支援する韓国の市民グループも今回の合意に対しショックを隠さない。「雀の涙ほどの金欲しさに魂を売るなど韓国政府は恥知らずだ」--"The agreement is nothing but a diplomatic collusion that thoroughly betrayed the wishes of comfort women and the South Korean people."(合意事項は慰安婦と韓国民の願いを完全に裏切る外交的馴れ合い以外の何物でもない)と糺弾する。

国際アムネスティ東アジアのスタッフは"The women were missing from the negotiation table."(当事者の女性たちが交渉のテーブルから除外されていた)と指摘。そのうえで、"They must not be sold short in a deal that is more about political expediency than justice."(彼女たちが、正義よりむしろ政治的ご都合主義優先の取り決めによって傷つけられてはならない)と語っている。

"If I look back, we've live a life deprived of our basic rights as human beings. So I can't be fully satisfied."( 振り返えれば、私たちは人間としての基本的権利・尊厳を奪われた生涯を過ごしてきた。だから合意事項に満足などできない)--この88歳の元従軍慰安婦の言葉は重い。

日韓両政府は外交成果を謳歌、問題の蒸し返しはしないことを約したらしい。韓国大統領府は不満者や反対者を懸命に説得しているが........。
冷笑家?A. Bierce は<外交とは>「祖国のために偽りを言う愛国的な技術」だと定義する。
さて今回の日韓交渉だが、どうも『双方のメンツとご都合主義によるセレモニー』と評すべきか?

    ”去年の月のこせる空のくらきかな” -- 久保田万太郎