HeadlineのパンチとTitleの芸の無さ

2010 FIFA World Cup South Africaの英字紙記事のHeadlineが面白い。
W杯専門のgoal.comは“Denmark 1-3 Japan: Samurai Blue Outclass Danes To Advance To Second Round”−−“デンマーク1-3で日本に敗れる:青きサムライ、デンマークを圧倒し予選突破”Denmarkの敗北に焦点を当てている。

The Wall Street Journal com.のHeadlineは“Japan Advances on Gorgeous Free Kicks”とコンパクトでキレが良い。


USがEnglandを抜いてCグループトップでBest16に進んだ。additional time(injury-time)でのエースL.Donovanの起死回生のゴール。あのジダンの母国Algeriaを1-0で破っての劇的勝利だ。
AP通信のHeadline“From zero to hero”が憎い。小見出しの“Better late than never”(遅くても無いよりはまし)。日本語訳は不要だろう。


今回のW杯での日本チームの活躍を報じる英字紙の最高のHeadlineは緒戦の対カメルーン戦勝利を報じた現地南ア紙の“Japan Cameroon Kill”。top killをなぞって“カメルーン封じ込め”。
他方、近頃の映画のタイトルは難解でお粗末の限りだ。題名から内容を連想するのはとても無理。何しろカタカナの題名や怪しい英語(和製英語?)のタイトルを付けた邦画が目立つ。
本日のA紙夕刊に“さあ明日は映画に行こう”という4面に及ぶ映画館案内の広告特集が載っていたが、正直、参った。
タイトルによって邦画か外国映画か区別が出来ない。
いつかも指摘したが、アカデミー賞オスカー受賞作品The Hurt Locker。現在上映中の首都圏のtheaterを探すのに苦労する。やっと数館見つけたが、“ハート・ロッカー”とあるのみ。日本語で言えば“棺桶“だが、拙ければむしろ原題のままの方が良い。

「イエロー・ハンカチーフ」が明日26日より東劇などで公開される。原題はThe Yellow Handkerchief、2008年米国で制作、インド人の監督によるものだが、山田洋次監督の名作「幸福の黄色いハンカチ」の米国版だ。これなどはカタカナの題名も妥当なところだろう。


が、7月半ばに封切される作品の1つ“シュアリー・サムデイ”。このカタカナ題名の下にSurely Somedayとある。小栗旬初監督作品との触れ込みだが、意味不明。キャプションに“いつかきっと夢見る人”とあるが何故、タイトルにカタカナと英語?を使ったのか解せない。
こうした迷タイトルの映画がずらりと居並ぶなかで、注目すべきは作品が二作ある。ひとつは“Vietnam documentaries move hearts and minds”とThe Daily Yomiuriのスタッフ・ライター、Atsulo Matsumoto氏が注目するベトナム戦争の記録映画“Hearts and Minds”。東京写真美術館ホールで目下上映中、必見だ。
もう一作は藤沢周平さんの隠し剣シリーズ『必死剣 鳥刺し』。第34回モントリオール世界映画祭に正式出品される時代劇映画のハードボイルドだ。何年か前に同じ周平作品『隠し剣鬼の爪』も台詞の少ないハードボイル派だったが、今度の『・・鳥刺し』の結末はハッピーエンドではない。善人・悪人、正邪の区別もない。非情な武士の世界を描く作品だ。

≪主人公の近習頭取兼見三左ェ門の秘剣≪鳥刺し≫の刃先が相手の鳩尾(みぞおち)から肺まで深々と入り込んだ。「・・・・」鳥刺し、と三左ェ門は呟いたのだが、誰もその声を聞かなかった。相手の絶叫を聞いて、数本の刀身が、三左ェ門の身体に集まった。三左ェ門の巨躯は坐った恰好から横転して畳に転がった。そして今度こそ動かなくなった≫
これは秘剣ではない。≪必死剣≫と称すべきだろう。
お馴染みの文庫本“隠し剣”シリーズの連作集七編に収められている『・・鳥刺し』を再読し、来月映画館に出かけたい。