大切な読書案内人

ほんの数ヶ月前まで、日曜日の朝8時よりBS1で『週間ブックレビュー』をみるのを楽しみにしていた。ボクにとっては1つの読書案内人となってくれるからだ。この定番が、つい最近になり土曜日朝8時半からの番組に時間変更された。そのため、土曜の朝見逃したときは、深夜の採録モノをレジタルコピーし、後日暇な時間に見ることにしている。
今朝、一昨日の『・・ブックレビュー』を拝見した。特集コーナーに最近『蝶々は誰からの手紙』なる妙なタイトルの書評本を出した丸谷才一さんが登場した。
書評の重要な役割は「読者に生きる力を更新するところにある」と丸谷さん。当然のことだが「読者を本屋に走らせる書評がいい」という。
そして「ひいきの読書案内人を持つ人はすぐれた読者で、ランクの高い読書人だ」とつけ加える。
ボクにも“モノを考えさせ、元気づけてくれる”読書案内人が何人か存在するが、そのうちの代表格が丸谷さんだ。
その丸谷さんが30年以上も前に『文章読本』を出している。『文章読本』といえば昭和9年の谷崎潤一郎のモノを皮切りに、その後、川端康成三島由紀夫中村真一郎が類似書を著している。
ボクの手元にある丸谷さんの『文章読本』のなかの第二章「名文を読め」に次のような一節が見られる。
 われわれはまつたく新しい言葉を創造することはできないのである。
 可能なのはただ在来の言葉を組み合わせて新しい文章を書くことで、
 すなわち、言葉づかひを歴史から継承することは文章を書くといふ
 行為の宿命なのだ。
 ・・名文はわれわれに対し、その文章の筆者の、そのときにおける
 精神の充実を送り届ける。それは気魄であり、緊張であり、風格で
 あり、豊かさである。・・・
丸谷才一著の『文章読本』は、文章を書く際の心構えとコツを具体的に説いてくれる有難い水先案内である。