余暇社会とは“老齢化“社会・・

今からもう35年前になるが、1974年の暮れに、同じ一橋大卒の城山三郎さんと大平正芳氏が対談している。当時の日本は不況下にあった。城山さん47歳、『官僚たちの夏』を執筆中。大平氏は64歳、田中角栄内閣で大蔵大臣を務めていた。
この対談は「如水会々報」に掲載されているが、その中に直面しつつある余暇社会と老齢化社会への対応を話題にした一節があり、興味深い。
≪城山≫余暇社会になると同時に老人社会になりますね。年齢構成がだんだ   ん老齢化していく。そういう意味では、子どもの遊び場もだいじだけ   れども、もっと老人の遊び場みたいなものをどんどんつくらないとい   けませんね。いまは不良少年が問題ですけれども、将来、不良老人と   いうのが非常な問題になってくるんじゃないでしょうか。

≪太平≫老人問題というのは重要問題だと思うんですよ。
≪城山≫そうですね。ですから、いま、なにかというと、すぐ子どもの遊び   場、子どもの遊び場というけれども、そういいながら、老人の遊び場   はどうなっているんでしょう。たとえば、河川敷の、非常に安い、老   人でも手軽に遊べるようなゴルフ場などを、いま、どんどん建設省あ   たりが取り上げてつぶしていますね。そして、それを子どもの広場と   か、若者のスポーツ広場とかにしていますけれども、ああいうのはつ   ぶすんじゃなくて、あれはあれで残しておき、ほかにそういうものを   若者のためにつくればいいんですよ。なにか、いまやっている仕事は   逆じゃないかという気がするんですけどね。政府はどんどん安い老人   のための健康的な遊び場みたいなものを、たとえば河川敷のゴルフ場   みたいなものをつくらなくちゃいかんのに、どんどんつぶしていくと   いうのは、どうもぼくはおかしいと思うんです。それは、いろんな政   府の予算があるんでしょうけれども、やっぱり子どものことはいいか   げんにして、もっと老人社会のことを真剣に考えるべき段階じゃない   かとおもうんですけれどもね。

≪大平≫そういうことですね。あなたはまだお若いけど、わたしたちは、も
   うだいたい老境にはいった(笑)。五十五、六歳がだいたい定年ですわ   ね。わしらはもう第二の定年を迎えてるんですよ。
≪城山≫まだ、これからやってもらわなくちゃならないのに、そんなこと    いっちゃ困るんじゃないですが(笑)
≪大平≫これから先、どういう暮らし方をするかというのは大問題ですよ、   ええ。
『アーウー宰相』として揶揄され親しまれた太平さんはこの対談の六年後の80年、総選挙の遊説激務で倒れ、急逝した。享年70歳。総裁の討ち死にが弔い合戦となり自民党は勝利した。

35年前のお2人の対談は今の時代には合わないだろうか。ボクにとっては他人ごとではない。老いゆく者のための手ごろな遊びもなければ、子ども達の健全な遊び場も少なくなっている。目立つのは不良少年やギャルのたまり場ばかりだ。